そっと見守るような…そんな愛し方ができたら良かった?
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そうだなぁ、例えば広い庭、家は大きくなくても良いかな。あとは白くてフサフサの毛の犬。カーテンは白、壁紙は暖かな色。ああ、勿論ベッドは一緒に眠れる大きさで。あとあと、お風呂も大きなのが良いさね、一緒に入りたいし!そんで、天気の良い日は一緒に日向ぼっこして、お昼庭で食べちゃったりしてさ。そうそう、干したてのブランケットに二人で包まったりして。
温かいお日様、心地よい風、耳をくすぐる木々のざわめき。そんな些細な事を嬉しく思いながら、日々を過ごせたら。
なあ、そんな家庭って、良いと思わない?
「ね、ユウ、凄く幸せそうじゃね?」
「…御前の幸せの基準が理解らねぇ。」
「えぇ、オレの話ちゃんと聞いてたんさ?」
本に視線を落としてあげようともしないから、態とらしく溜息を吐く。そうすると、遅れて響く舌打ちと、ぱたん、と本を閉じる音。肘を突いて酷く気だるげに、それでも呆れた様な瞳と苦笑とも取れる表情。それは、彼のお決まりの聞く体制。
それに満足して頭の中に思い描いたモノに色をつけ音を乗せる。そうだなぁ、後は、…うん、ユウが隣にいて、目が覚めたらおはようって言って、出掛ける時は一緒。でもどうしても一人の時は、帰って来たらお帰りなさいと、寝る前はおやすみ、って言って。また目が覚めたら腕の中にユウがいて、ユウの瞳に一番最初にオレが映って、おはよう、って言う。
そんな風になれたら、そんな毎日が送れたら凄く凄く幸せ。
「オレ、なんかそーいうの憧れる。」
安心できる家。帰る場所。温かな家庭。平和な日常。愛しい人。それは、今まで一つも手に入る事が無かったモノ。
君という存在に触れて、愛されて、欲が出てきたと言ったら、それでおしまいなのだけれど、夢を見るくらい、きっと自由。この争いと殺戮ばかりの世界のなかで、穏やかな夢を見るくらいは自由。
ずっと君と一緒にいたいと思うことくらい、は。
「…俺は、御前の望む温かい家庭なんざ与えられねぇ。」
「知ってるさ、そんなの。戦争なんざそんなモンだし?」
「だが、御前に"おかえり"とは、言ってやれる。」
一瞬、何を言われたのか、何を言ってくれたのか理解出来なくて、きょとっと相手を見る。さも当然だとでも言う様な表情と、口元に浮かんだ微笑。ああもう、温かい家もフサフサの犬も、全部要らない。なんかもう、本当そんなのどうでも良い、かも。
ただ、今は凄く、触れたくて触れたくて、愛したくて堪らない。
確信なのか無意識なのか、オレの心を何時も攫っていく君、を。
「ユウちゃん、その後に、ご飯?お風呂?俺?って聞いて。」
「…寝言は寝て言え。」
温かいお日様、心地よい風、耳をくすぐる木々のざわめき。そんな些細な事を嬉しく思いながら、日々を過ごせたら。
なあ、そんな家庭って、良いと思わない?
「ね、ユウ、凄く幸せそうじゃね?」
「…御前の幸せの基準が理解らねぇ。」
「えぇ、オレの話ちゃんと聞いてたんさ?」
本に視線を落としてあげようともしないから、態とらしく溜息を吐く。そうすると、遅れて響く舌打ちと、ぱたん、と本を閉じる音。肘を突いて酷く気だるげに、それでも呆れた様な瞳と苦笑とも取れる表情。それは、彼のお決まりの聞く体制。
それに満足して頭の中に思い描いたモノに色をつけ音を乗せる。そうだなぁ、後は、…うん、ユウが隣にいて、目が覚めたらおはようって言って、出掛ける時は一緒。でもどうしても一人の時は、帰って来たらお帰りなさいと、寝る前はおやすみ、って言って。また目が覚めたら腕の中にユウがいて、ユウの瞳に一番最初にオレが映って、おはよう、って言う。
そんな風になれたら、そんな毎日が送れたら凄く凄く幸せ。
「オレ、なんかそーいうの憧れる。」
安心できる家。帰る場所。温かな家庭。平和な日常。愛しい人。それは、今まで一つも手に入る事が無かったモノ。
君という存在に触れて、愛されて、欲が出てきたと言ったら、それでおしまいなのだけれど、夢を見るくらい、きっと自由。この争いと殺戮ばかりの世界のなかで、穏やかな夢を見るくらいは自由。
ずっと君と一緒にいたいと思うことくらい、は。
「…俺は、御前の望む温かい家庭なんざ与えられねぇ。」
「知ってるさ、そんなの。戦争なんざそんなモンだし?」
「だが、御前に"おかえり"とは、言ってやれる。」
一瞬、何を言われたのか、何を言ってくれたのか理解出来なくて、きょとっと相手を見る。さも当然だとでも言う様な表情と、口元に浮かんだ微笑。ああもう、温かい家もフサフサの犬も、全部要らない。なんかもう、本当そんなのどうでも良い、かも。
ただ、今は凄く、触れたくて触れたくて、愛したくて堪らない。
確信なのか無意識なのか、オレの心を何時も攫っていく君、を。
「ユウちゃん、その後に、ご飯?お風呂?俺?って聞いて。」
「…寝言は寝て言え。」
感傷
インソムニア
インソムニア
( 前言撤回。ユウが傍にいてくれれば、それだけで幸せ! )
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腕の中にある温もりが微かに身じろぎ、唇が薄く開く。
少し腫れた目元は、昨夜久しぶりの逢瀬に加減が出来なかった所為か。きっと瞳を醒ましたら、第一声で罵声を受ける事になるんだろう。(まあ、声も枯れてしまっているだろうから、気にするほどの事でもない、が。)そして次の瞬間には頬を染めて、鋭いその視線を泳がせて。何度抱いても、目覚めた朝は処女の様な反応をする、その姿を待つのがとても愉しくて、愉しくて。静かに、白い頬に掛かった黒髪を耳へと掛ける。
途端、現れた、濡れた唇に欲情を覚えるのは、仕方の無い事で。
「ユーウー君。早く起きて俺を見てくれないと、第三ラウンド突入するけど?」
「…ん…、…」
「困ったモンだ…これで無意識だってんだから…。」
見た目に寄らず低血圧なのか、朝に弱く、何時だって声を掛けたくらいじゃ起きやしない。(以前無理矢理、繋がったまま揺らしたら啼きながら起きたっけ。)(あの時は可愛かったのになぁ。)(でもその後が悲惨だった。本気で恋人の事斬ろうとするんだから、さ。)スっと視線を落とせば、お姫様はまだスヤスヤと夢の中。全く、これでも一応、俺達敵同士、だぜ?恋人以前に、敵同士。何時その、脈打ち、温かな心臓を抜きさるかも判らない。
「ユウ。」
ズプ、っと白い肌を突き抜けて、指先に温かな心臓が触れる。ゆっくりと、規則的に伸縮し、静かに、それでも大きく。全身へと血を廻らせる器官。生きていく為に必要な、不可欠な。愛でる様に優しく何度も触れて。もしも今、俺がコレを抜き取れば、お前はずっと、綺麗なまま、美しいまま、誰にも傷付けられる事無く、俺の知らない場所で死ぬ事も無く。今、この瞬間の、安らかな顔のままで、痛みも苦しみも、何も?
瞳を細めた瞬間、今まで微動だにもしなかった瞼がピクリ、と震えて、ゆっくりと、ゆっくりと、世界の色を取り込み、光を点す瞳は、怯えに染まるだろうか。突きつけられた現実に、悲壮の色を浮かべるだろうか。促す様に見つめ返せば、不敵に弧を形作る、薄い唇。
「殺りたきゃ殺れよ。」
「…俺が殺らないと思ってる?」
「まさか。その前に、…俺がお前を殺してやる。」
薄く、妖艶な、それでも何処か優しさを讃えた微笑み。あー、駄目だね、こりゃ。全部見透かされてる感じ?何これ、俺がヘタレみたいじゃん。ああもう、その余裕そうな笑み、ぐちゃぐちゃにしてやりたい。俺だけの特権でしょ?ね、直ぐに何も考えられない様に、お前も俺もなるんだからさ。でも、ちょっと、やっぱり、加減出来ねぇかも。火点けたのそっちだからさぁ、最後まで頑張ってくれよ。今度、いつ逢えるかも判らない毎日を確かに過ごせる位にさ。
「ユウ君、やっぱり第三ラウンド。」
「…寝かせろ。」
少し腫れた目元は、昨夜久しぶりの逢瀬に加減が出来なかった所為か。きっと瞳を醒ましたら、第一声で罵声を受ける事になるんだろう。(まあ、声も枯れてしまっているだろうから、気にするほどの事でもない、が。)そして次の瞬間には頬を染めて、鋭いその視線を泳がせて。何度抱いても、目覚めた朝は処女の様な反応をする、その姿を待つのがとても愉しくて、愉しくて。静かに、白い頬に掛かった黒髪を耳へと掛ける。
途端、現れた、濡れた唇に欲情を覚えるのは、仕方の無い事で。
「ユーウー君。早く起きて俺を見てくれないと、第三ラウンド突入するけど?」
「…ん…、…」
「困ったモンだ…これで無意識だってんだから…。」
見た目に寄らず低血圧なのか、朝に弱く、何時だって声を掛けたくらいじゃ起きやしない。(以前無理矢理、繋がったまま揺らしたら啼きながら起きたっけ。)(あの時は可愛かったのになぁ。)(でもその後が悲惨だった。本気で恋人の事斬ろうとするんだから、さ。)スっと視線を落とせば、お姫様はまだスヤスヤと夢の中。全く、これでも一応、俺達敵同士、だぜ?恋人以前に、敵同士。何時その、脈打ち、温かな心臓を抜きさるかも判らない。
「ユウ。」
ズプ、っと白い肌を突き抜けて、指先に温かな心臓が触れる。ゆっくりと、規則的に伸縮し、静かに、それでも大きく。全身へと血を廻らせる器官。生きていく為に必要な、不可欠な。愛でる様に優しく何度も触れて。もしも今、俺がコレを抜き取れば、お前はずっと、綺麗なまま、美しいまま、誰にも傷付けられる事無く、俺の知らない場所で死ぬ事も無く。今、この瞬間の、安らかな顔のままで、痛みも苦しみも、何も?
瞳を細めた瞬間、今まで微動だにもしなかった瞼がピクリ、と震えて、ゆっくりと、ゆっくりと、世界の色を取り込み、光を点す瞳は、怯えに染まるだろうか。突きつけられた現実に、悲壮の色を浮かべるだろうか。促す様に見つめ返せば、不敵に弧を形作る、薄い唇。
「殺りたきゃ殺れよ。」
「…俺が殺らないと思ってる?」
「まさか。その前に、…俺がお前を殺してやる。」
薄く、妖艶な、それでも何処か優しさを讃えた微笑み。あー、駄目だね、こりゃ。全部見透かされてる感じ?何これ、俺がヘタレみたいじゃん。ああもう、その余裕そうな笑み、ぐちゃぐちゃにしてやりたい。俺だけの特権でしょ?ね、直ぐに何も考えられない様に、お前も俺もなるんだからさ。でも、ちょっと、やっぱり、加減出来ねぇかも。火点けたのそっちだからさぁ、最後まで頑張ってくれよ。今度、いつ逢えるかも判らない毎日を確かに過ごせる位にさ。
「ユウ君、やっぱり第三ラウンド。」
「…寝かせろ。」
快楽
モノフォビア
モノフォビア
( そんな悪態吐いて、後から弱音吐いても知らねぇよ? )
たとえばもう少しだけ、この指先にアイツの熱が残っていたのなら。
そう願う事すら、俺達には罪なのだろうか。
血で汚れあった手の平でしか触れる事のできない僕たちは、互いに、そうお互いの温もりを覚える事だけが、きっと、今この世界、朽ちて軋んでいく、悲鳴をあげる世界に"存在"するという、自分自身を繋ぎとめる理由や、それを確認する術になっていて。そう、僕らは皆、不安で堪らないんでしょうね。汚れていく事も、変わっていく事も、全部。だから誰かに繋ぎとめて欲しくて、温もりを知りたくて、知ってほしくて。もしかしたら、自分の穢れが浮き彫りになるかもしれないのに、それでも、求めずにはいられない。
確かに自分を理解してくれる"存在"を。
ねえだから、手を繋ぎませんか。
そう微笑った白い、どこまでも白い(本当に、白すぎて、そこに"存在"しているかどうかも疑わしい)アイツは、同じだけ白い手の平を、俺の方へと差し出した。
握り返せとでも言うんだろうか、俺に、この、白い手を。そんな事が出来る筈も無く、馬鹿げている、そう罵って、一度はその手を振り払った。汚れているんだ言葉通り、今の俺の手は、血で汚れている。それは今まで共に任務をしていたお前なら理解る筈だろ?同じだけ、あの、穢れた血で、両手を汚した筈なんだから。それなのに、再度差し出された手は未だ真っ白なまま。どこか縋るように伸ばされた手は、真っ白なまま。綺麗な、まま?本当に?
「ねえ、カンダ。」
「うるせえな、…」
伸ばされた手の平を絡め、指先に当たった液体に眉を寄せた。その先を、見る必要は無い。綺麗な訳が無いのだから。人間は一体どれだけ自分の想いで、"存在"を美化できるのか。
同じだけ汚れて、同じだけ穢れて、同じだけの屍の上に立ち、それでも歩んで行くんだろう。
コイツは同じ様に、たくさんの想いを捨てきれずに、その肩に乗せながら。本当に馬鹿げてる。(一々泣くな、って言ったら無理して微笑いやがるから、もう言わねえ。)ただ、その馬鹿馬鹿しさもコイツの一部と認めている辺り、自分もその色に侵食されてきたらしい。それはきっと、自分が思っているより、ずっと。
おかしくておかしくて、喉の奥で笑えば、それにぴくりと跳ねたのは、握り締めたばかりの手。
「…なんだ。」
「いえ、嫌なら、やっぱり…」
「嫌なら最初からしねぇよ。」
それでも緩く自分の手を引き離そうとする、だから、確りと、それこそ指先の色が少し失せていく位に繋ぎとめて。ああ、理解った。今きっと、理解したんだろう、こいつも、自分以外の手に触れて、俺と同じ様に。不安と苛立ちが募るこのひび割れた世界の確かに変わらないものと、自分と同じもの、を。同じ様に穢れて、汚れて、それでも息衝くもの、を。
「気にすんな、俺の手も、とっくに汚れてる。」
そう願う事すら、俺達には罪なのだろうか。
血で汚れあった手の平でしか触れる事のできない僕たちは、互いに、そうお互いの温もりを覚える事だけが、きっと、今この世界、朽ちて軋んでいく、悲鳴をあげる世界に"存在"するという、自分自身を繋ぎとめる理由や、それを確認する術になっていて。そう、僕らは皆、不安で堪らないんでしょうね。汚れていく事も、変わっていく事も、全部。だから誰かに繋ぎとめて欲しくて、温もりを知りたくて、知ってほしくて。もしかしたら、自分の穢れが浮き彫りになるかもしれないのに、それでも、求めずにはいられない。
確かに自分を理解してくれる"存在"を。
ねえだから、手を繋ぎませんか。
そう微笑った白い、どこまでも白い(本当に、白すぎて、そこに"存在"しているかどうかも疑わしい)アイツは、同じだけ白い手の平を、俺の方へと差し出した。
握り返せとでも言うんだろうか、俺に、この、白い手を。そんな事が出来る筈も無く、馬鹿げている、そう罵って、一度はその手を振り払った。汚れているんだ言葉通り、今の俺の手は、血で汚れている。それは今まで共に任務をしていたお前なら理解る筈だろ?同じだけ、あの、穢れた血で、両手を汚した筈なんだから。それなのに、再度差し出された手は未だ真っ白なまま。どこか縋るように伸ばされた手は、真っ白なまま。綺麗な、まま?本当に?
「ねえ、カンダ。」
「うるせえな、…」
伸ばされた手の平を絡め、指先に当たった液体に眉を寄せた。その先を、見る必要は無い。綺麗な訳が無いのだから。人間は一体どれだけ自分の想いで、"存在"を美化できるのか。
同じだけ汚れて、同じだけ穢れて、同じだけの屍の上に立ち、それでも歩んで行くんだろう。
コイツは同じ様に、たくさんの想いを捨てきれずに、その肩に乗せながら。本当に馬鹿げてる。(一々泣くな、って言ったら無理して微笑いやがるから、もう言わねえ。)ただ、その馬鹿馬鹿しさもコイツの一部と認めている辺り、自分もその色に侵食されてきたらしい。それはきっと、自分が思っているより、ずっと。
おかしくておかしくて、喉の奥で笑えば、それにぴくりと跳ねたのは、握り締めたばかりの手。
「…なんだ。」
「いえ、嫌なら、やっぱり…」
「嫌なら最初からしねぇよ。」
それでも緩く自分の手を引き離そうとする、だから、確りと、それこそ指先の色が少し失せていく位に繋ぎとめて。ああ、理解った。今きっと、理解したんだろう、こいつも、自分以外の手に触れて、俺と同じ様に。不安と苛立ちが募るこのひび割れた世界の確かに変わらないものと、自分と同じもの、を。同じ様に穢れて、汚れて、それでも息衝くもの、を。
「気にすんな、俺の手も、とっくに汚れてる。」
純白
マダードール
マダードール
(離せないのは、やっぱりお前の手だけは、綺麗に見えるからかもしれない。 )
アイツは、決して弱音を言わない。意志の強さを湛えた瞳は酷く静かに、現実だけを、前だけを、いつだって見据えていて、なあ、なんでそんな前ばっかり見てんの?少しはオレの方を見たらどうなんさ。そう言ってみたって、チラリと此方を一瞥すればまだ良い方で、機嫌の悪い時なんてオレの方を見向きもしない。ちょっと、流石にオレでも凹むんだけど。
だから、仕返しに、前を見据えていないと歩む事すら出来ない、なんて何時からお前はそんなに弱くなったんさ。そう以前口からポロリと紡いだ言葉はどうやら癇に障ったらしく、暫く口をきいて貰えなかった。(あの時は、本当にもう終わりかと思った。)(いや、本当に冗談抜きで。)
あの時の怒りよりも哀し気の勝った瞳は、今でも脳裏に焼きついてる。
「なあ、何でそんなに頑張んの?」
「…は?」
「いっつもいっつも前だけ見てさ。疲れねえんか?」
ポイ、とバンダナと眼帯を放り投げる。こんなもの、邪魔だ。確り見ていないと、すぐ何処かに行ってしまいそうだし。(まあ、誰かさんみたいに方向音痴じゃないから大丈夫だけど、心配なのはそこじゃなくて。)ジィ、とオレを見る蒼い瞳、綺麗な綺麗な、青い瞳。珍しくオレが映ってる、なんてちょっと口元を緩めたら、それに反する様にその瞳は険しさを増した。
あれ、まさかオレ何か不味い事言った?地雷、踏んだ?
「……ユウ?」
「うるせぇ。」
「(うあ、すげぇご機嫌ナナメ!)」
不意に逸らされた瞳は苛立ちと、何処か不満気?あれ、何かちょっと、落ち込んでる?結構長い間、オレはお前を見てたんだから、それ位気付くって。あれ、でも何で?今のって、落ち込むのオレじゃない?冷たくあしらわれたの、オレさ?ぐるぐるぐるぐる、回る思考と同じ様に、ひらひらと落ちてきた葉は、即座に真っ二つになって、風に吹かれて別々の場所へと舞った。
あーあ、元は一つだったのに、可哀想。でも、刀を振るうアイツは綺麗だから、少しの犠牲はつき物だ。残念ながら、オレは何よりもアイツ優先だし。(これ、ちょっと惚気かも。)
「……、なら…」
「んー?」
「疲れんなら、先に部屋に戻ってれば良いだろ。」
「は?」
プィ、と視線を逸らして(あ、今のすげー可愛い)鍛錬に没頭する後姿を見詰める。あれ?今、何て言ったんさ?疲れる?誰が?オレが?お前といるのに?まさか、そんな事ある訳無い。
あれ、ちょっと今の言葉って、まさか勘違いしてるんか?何、もしかして今のって、拗ねてたの?うわ、ちょっと、すげぇ珍しいもん見た!
「ユウー。」
「うるせぇ。」
「後で部屋戻ったら、一緒に昼寝しような。」
「しねえよ。」
「昼寝の後は一緒に飯食おうな。」
「しねえって言ってんだろ。邪魔すんな。」
「待ってるからさ、オレ、終わるまで此処にいて良い?」
「……勝手にしろ。」
一度だけオレの方を振り返って、また前を向く。何さ、理解り難いんだっつの。その愛情表現。
緩む口元を隠しもせずにその背中を見詰める。そういや、鍛錬してるトコ見られんの嫌いだ、って随分前に言ってたな、なんて頭の片隅で思った。
「ん、勝手にするさ。」
だから、仕返しに、前を見据えていないと歩む事すら出来ない、なんて何時からお前はそんなに弱くなったんさ。そう以前口からポロリと紡いだ言葉はどうやら癇に障ったらしく、暫く口をきいて貰えなかった。(あの時は、本当にもう終わりかと思った。)(いや、本当に冗談抜きで。)
あの時の怒りよりも哀し気の勝った瞳は、今でも脳裏に焼きついてる。
「なあ、何でそんなに頑張んの?」
「…は?」
「いっつもいっつも前だけ見てさ。疲れねえんか?」
ポイ、とバンダナと眼帯を放り投げる。こんなもの、邪魔だ。確り見ていないと、すぐ何処かに行ってしまいそうだし。(まあ、誰かさんみたいに方向音痴じゃないから大丈夫だけど、心配なのはそこじゃなくて。)ジィ、とオレを見る蒼い瞳、綺麗な綺麗な、青い瞳。珍しくオレが映ってる、なんてちょっと口元を緩めたら、それに反する様にその瞳は険しさを増した。
あれ、まさかオレ何か不味い事言った?地雷、踏んだ?
「……ユウ?」
「うるせぇ。」
「(うあ、すげぇご機嫌ナナメ!)」
不意に逸らされた瞳は苛立ちと、何処か不満気?あれ、何かちょっと、落ち込んでる?結構長い間、オレはお前を見てたんだから、それ位気付くって。あれ、でも何で?今のって、落ち込むのオレじゃない?冷たくあしらわれたの、オレさ?ぐるぐるぐるぐる、回る思考と同じ様に、ひらひらと落ちてきた葉は、即座に真っ二つになって、風に吹かれて別々の場所へと舞った。
あーあ、元は一つだったのに、可哀想。でも、刀を振るうアイツは綺麗だから、少しの犠牲はつき物だ。残念ながら、オレは何よりもアイツ優先だし。(これ、ちょっと惚気かも。)
「……、なら…」
「んー?」
「疲れんなら、先に部屋に戻ってれば良いだろ。」
「は?」
プィ、と視線を逸らして(あ、今のすげー可愛い)鍛錬に没頭する後姿を見詰める。あれ?今、何て言ったんさ?疲れる?誰が?オレが?お前といるのに?まさか、そんな事ある訳無い。
あれ、ちょっと今の言葉って、まさか勘違いしてるんか?何、もしかして今のって、拗ねてたの?うわ、ちょっと、すげぇ珍しいもん見た!
「ユウー。」
「うるせぇ。」
「後で部屋戻ったら、一緒に昼寝しような。」
「しねえよ。」
「昼寝の後は一緒に飯食おうな。」
「しねえって言ってんだろ。邪魔すんな。」
「待ってるからさ、オレ、終わるまで此処にいて良い?」
「……勝手にしろ。」
一度だけオレの方を振り返って、また前を向く。何さ、理解り難いんだっつの。その愛情表現。
緩む口元を隠しもせずにその背中を見詰める。そういや、鍛錬してるトコ見られんの嫌いだ、って随分前に言ってたな、なんて頭の片隅で思った。
「ん、勝手にするさ。」
箱庭
バイオリズム
バイオリズム
( なあ、ちょっとオレ、自惚れても良い? )
ねえ、僕らは何時だって、報われない。
そう思いませんか?何を育む訳でもない、生み出せない、ただ、そう、何時か君が言っていた様に、奪う事しか出来ないのかもしれない。
だって何も、本当に、何も。僕達が出来る事は酷く不確かな事ばかりで。君のその、蒼黒色の瞳が、訴えていた様に、咎めていた様に、まるで、縋っていた、様に。せめて何かカタチでも残せたら、この憂いも悲しみも癒せるんだろうか、もし誰かを救えたという証が残せたなら、僕が此処にいたという証が残せたなら、君が此処にいるという証が残せたなら、もしも、僕と君が、共にいたという証が、残せた、なら。
それでも、ほら、やっぱり、僕らが出来る事なんて、何時だってただ、ナイフを握ったその手を無感情に振り翳すだけ。
何時しか過ぎた不安は、「ぼくは いつかきみを こわしてしまうんじゃないか」 なんて。
「…阿呆くせぇ。」
「あ、酷いですよ、カンダ。僕の話、ちゃんと聞いてます?」
「るせぇな、邪魔すんなら出てけ。」
不機嫌そうに、実際、不機嫌なんだろう彼は分厚い本へと落とした視線を上げる事も無く、ぴしゃりと言い放つ。休みの日の彼の行動と言えば、稽古をしているか、睡眠を取っているか、本を読んでいるか。この前の休みは、書庫で見つけたんだっけ。(あそこには、出来れば行って欲しくないのに。)(だってあそこには、ラビがいる。)静かに本を読む事が好きな君の、邪魔をしたい訳では無いんだけど。(でもね、知ってるんですよ、僕は。)(さっきから少しも、頁を捲っていない事。)
「カンダは、不安にならないんですか?」
「…何を。」
「僕が君を殺してしまうんじゃないか、って。」
「…くだらねぇ…。」
「あれ、そんなに僕、愛情表現希薄でした?」
にこり、と微笑ってそう言えば、微かに染まる頬と、遅れて響く舌打ち。可愛い、なんて言ったらきっと、それこそ目に見えぬ速さで部屋から追い出されてしまうんだろう。(易々と追い出されてやる気も無いけれど。)小さく落ちた沈黙は彼との空間では想定内で(何時だって彼は視線すら合わせやしないし、照れ隠しだって、理解ってはいるんだけど。)その沈黙を破るのは僕、の筈だった。
けれどその場に響いたのは、静かに、諭す様に、それでも確かな鋭利さを持った声音。
「…護られて簡単に死ぬ奴を望むなら、他を探せ。」
「え?」
「俺は、お前にだって簡単に殺されてやらない。お前を殺す気も、殺させる気も、ない。」
「…どうして?」
「……、…」
「ねえ、どうしてです?教えて下さいよ、カンダ。」
「…俺には、お前の居ない世界に価値は無い。喩え、お前が居た痕が残っていても。」
再度落ちた沈黙に、言われた言葉が頭の中を駆け巡る。ああ、こんな時ばかり、処理速度が追いつかない。パラリとまるで図った様に響いたページを捲る音に助けられて、どうせ読んでいない癖に、なんていう悪態は口元の笑みへとすり替わった。
何だ、彼も、少しは僕に、依存してくれているのか。彼らしい、判りにくい言葉は、何よりも甘くて、刹那的で、独善で。なんて、愛しい。
「まさか、君の口からそんな殺し文句が聞けるなんて思いませんでした。」
「…いい加減に黙らねぇと、本当に部屋から追い出すぞ。」
そう思いませんか?何を育む訳でもない、生み出せない、ただ、そう、何時か君が言っていた様に、奪う事しか出来ないのかもしれない。
だって何も、本当に、何も。僕達が出来る事は酷く不確かな事ばかりで。君のその、蒼黒色の瞳が、訴えていた様に、咎めていた様に、まるで、縋っていた、様に。せめて何かカタチでも残せたら、この憂いも悲しみも癒せるんだろうか、もし誰かを救えたという証が残せたなら、僕が此処にいたという証が残せたなら、君が此処にいるという証が残せたなら、もしも、僕と君が、共にいたという証が、残せた、なら。
それでも、ほら、やっぱり、僕らが出来る事なんて、何時だってただ、ナイフを握ったその手を無感情に振り翳すだけ。
何時しか過ぎた不安は、「ぼくは いつかきみを こわしてしまうんじゃないか」 なんて。
「…阿呆くせぇ。」
「あ、酷いですよ、カンダ。僕の話、ちゃんと聞いてます?」
「るせぇな、邪魔すんなら出てけ。」
不機嫌そうに、実際、不機嫌なんだろう彼は分厚い本へと落とした視線を上げる事も無く、ぴしゃりと言い放つ。休みの日の彼の行動と言えば、稽古をしているか、睡眠を取っているか、本を読んでいるか。この前の休みは、書庫で見つけたんだっけ。(あそこには、出来れば行って欲しくないのに。)(だってあそこには、ラビがいる。)静かに本を読む事が好きな君の、邪魔をしたい訳では無いんだけど。(でもね、知ってるんですよ、僕は。)(さっきから少しも、頁を捲っていない事。)
「カンダは、不安にならないんですか?」
「…何を。」
「僕が君を殺してしまうんじゃないか、って。」
「…くだらねぇ…。」
「あれ、そんなに僕、愛情表現希薄でした?」
にこり、と微笑ってそう言えば、微かに染まる頬と、遅れて響く舌打ち。可愛い、なんて言ったらきっと、それこそ目に見えぬ速さで部屋から追い出されてしまうんだろう。(易々と追い出されてやる気も無いけれど。)小さく落ちた沈黙は彼との空間では想定内で(何時だって彼は視線すら合わせやしないし、照れ隠しだって、理解ってはいるんだけど。)その沈黙を破るのは僕、の筈だった。
けれどその場に響いたのは、静かに、諭す様に、それでも確かな鋭利さを持った声音。
「…護られて簡単に死ぬ奴を望むなら、他を探せ。」
「え?」
「俺は、お前にだって簡単に殺されてやらない。お前を殺す気も、殺させる気も、ない。」
「…どうして?」
「……、…」
「ねえ、どうしてです?教えて下さいよ、カンダ。」
「…俺には、お前の居ない世界に価値は無い。喩え、お前が居た痕が残っていても。」
再度落ちた沈黙に、言われた言葉が頭の中を駆け巡る。ああ、こんな時ばかり、処理速度が追いつかない。パラリとまるで図った様に響いたページを捲る音に助けられて、どうせ読んでいない癖に、なんていう悪態は口元の笑みへとすり替わった。
何だ、彼も、少しは僕に、依存してくれているのか。彼らしい、判りにくい言葉は、何よりも甘くて、刹那的で、独善で。なんて、愛しい。
「まさか、君の口からそんな殺し文句が聞けるなんて思いませんでした。」
「…いい加減に黙らねぇと、本当に部屋から追い出すぞ。」
残響
ラストワルツ
ラストワルツ
( そんな事言われたら、ますます手放せなくなるじゃないですか! )