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そっと見守るような…そんな愛し方ができたら良かった?
主 人

 遊。 -Yu.-
 変態について詳しくは此方から

擬 人
夢 語
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アイツは、決して弱音を言わない。意志の強さを湛えた瞳は酷く静かに、現実だけを、前だけを、いつだって見据えていて、なあ、なんでそんな前ばっかり見てんの?少しはオレの方を見たらどうなんさ。そう言ってみたって、チラリと此方を一瞥すればまだ良い方で、機嫌の悪い時なんてオレの方を見向きもしない。ちょっと、流石にオレでも凹むんだけど。
だから、仕返しに、前を見据えていないと歩む事すら出来ない、なんて何時からお前はそんなに弱くなったんさ。そう以前口からポロリと紡いだ言葉はどうやら癇に障ったらしく、暫く口をきいて貰えなかった。(あの時は、本当にもう終わりかと思った。)(いや、本当に冗談抜きで。)

あの時の怒りよりも哀し気の勝った瞳は、今でも脳裏に焼きついてる。


「なあ、何でそんなに頑張んの?」
「…は?」
「いっつもいっつも前だけ見てさ。疲れねえんか?」


ポイ、とバンダナと眼帯を放り投げる。こんなもの、邪魔だ。確り見ていないと、すぐ何処かに行ってしまいそうだし。(まあ、誰かさんみたいに方向音痴じゃないから大丈夫だけど、心配なのはそこじゃなくて。)ジィ、とオレを見る蒼い瞳、綺麗な綺麗な、青い瞳。珍しくオレが映ってる、なんてちょっと口元を緩めたら、それに反する様にその瞳は険しさを増した。
あれ、まさかオレ何か不味い事言った?地雷、踏んだ?


「……ユウ?」
「うるせぇ。」
「(うあ、すげぇご機嫌ナナメ!)」


不意に逸らされた瞳は苛立ちと、何処か不満気?あれ、何かちょっと、落ち込んでる?結構長い間、オレはお前を見てたんだから、それ位気付くって。あれ、でも何で?今のって、落ち込むのオレじゃない?冷たくあしらわれたの、オレさ?ぐるぐるぐるぐる、回る思考と同じ様に、ひらひらと落ちてきた葉は、即座に真っ二つになって、風に吹かれて別々の場所へと舞った。
あーあ、元は一つだったのに、可哀想。でも、刀を振るうアイツは綺麗だから、少しの犠牲はつき物だ。残念ながら、オレは何よりもアイツ優先だし。(これ、ちょっと惚気かも。)


「……、なら…」
「んー?」
「疲れんなら、先に部屋に戻ってれば良いだろ。」
「は?」


プィ、と視線を逸らして(あ、今のすげー可愛い)鍛錬に没頭する後姿を見詰める。あれ?今、何て言ったんさ?疲れる?誰が?オレが?お前といるのに?まさか、そんな事ある訳無い。
あれ、ちょっと今の言葉って、まさか勘違いしてるんか?何、もしかして今のって、拗ねてたの?うわ、ちょっと、すげぇ珍しいもん見た!


「ユウー。」
「うるせぇ。」
「後で部屋戻ったら、一緒に昼寝しような。」
「しねえよ。」
「昼寝の後は一緒に飯食おうな。」
「しねえって言ってんだろ。邪魔すんな。」
「待ってるからさ、オレ、終わるまで此処にいて良い?」
「……勝手にしろ。」


一度だけオレの方を振り返って、また前を向く。何さ、理解り難いんだっつの。その愛情表現。
緩む口元を隠しもせずにその背中を見詰める。そういや、鍛錬してるトコ見られんの嫌いだ、って随分前に言ってたな、なんて頭の片隅で思った。


「ん、勝手にするさ。」





箱庭
バイオリズム

( なあ、ちょっとオレ、自惚れても良い? )

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ねえ、僕らは何時だって、報われない。
そう思いませんか?何を育む訳でもない、生み出せない、ただ、そう、何時か君が言っていた様に、奪う事しか出来ないのかもしれない。
だって何も、本当に、何も。僕達が出来る事は酷く不確かな事ばかりで。君のその、蒼黒色の瞳が、訴えていた様に、咎めていた様に、まるで、縋っていた、様に。せめて何かカタチでも残せたら、この憂いも悲しみも癒せるんだろうか、もし誰かを救えたという証が残せたなら、僕が此処にいたという証が残せたなら、君が此処にいるという証が残せたなら、もしも、僕と君が、共にいたという証が、残せた、なら。
それでも、ほら、やっぱり、僕らが出来る事なんて、何時だってただ、ナイフを握ったその手を無感情に振り翳すだけ。

何時しか過ぎた不安は、「ぼくは いつかきみを こわしてしまうんじゃないか」 なんて。


「…阿呆くせぇ。」
「あ、酷いですよ、カンダ。僕の話、ちゃんと聞いてます?」
「るせぇな、邪魔すんなら出てけ。」


不機嫌そうに、実際、不機嫌なんだろう彼は分厚い本へと落とした視線を上げる事も無く、ぴしゃりと言い放つ。休みの日の彼の行動と言えば、稽古をしているか、睡眠を取っているか、本を読んでいるか。この前の休みは、書庫で見つけたんだっけ。(あそこには、出来れば行って欲しくないのに。)(だってあそこには、ラビがいる。)静かに本を読む事が好きな君の、邪魔をしたい訳では無いんだけど。(でもね、知ってるんですよ、僕は。)(さっきから少しも、頁を捲っていない事。)


「カンダは、不安にならないんですか?」
「…何を。」
「僕が君を殺してしまうんじゃないか、って。」
「…くだらねぇ…。」
「あれ、そんなに僕、愛情表現希薄でした?」


にこり、と微笑ってそう言えば、微かに染まる頬と、遅れて響く舌打ち。可愛い、なんて言ったらきっと、それこそ目に見えぬ速さで部屋から追い出されてしまうんだろう。(易々と追い出されてやる気も無いけれど。)小さく落ちた沈黙は彼との空間では想定内で(何時だって彼は視線すら合わせやしないし、照れ隠しだって、理解ってはいるんだけど。)その沈黙を破るのは僕、の筈だった。
けれどその場に響いたのは、静かに、諭す様に、それでも確かな鋭利さを持った声音。


「…護られて簡単に死ぬ奴を望むなら、他を探せ。」
「え?」
「俺は、お前にだって簡単に殺されてやらない。お前を殺す気も、殺させる気も、ない。」
「…どうして?」
「……、…」
「ねえ、どうしてです?教えて下さいよ、カンダ。」
「…俺には、お前の居ない世界に価値は無い。喩え、お前が居た痕が残っていても。」


再度落ちた沈黙に、言われた言葉が頭の中を駆け巡る。ああ、こんな時ばかり、処理速度が追いつかない。パラリとまるで図った様に響いたページを捲る音に助けられて、どうせ読んでいない癖に、なんていう悪態は口元の笑みへとすり替わった。
何だ、彼も、少しは僕に、依存してくれているのか。彼らしい、判りにくい言葉は、何よりも甘くて、刹那的で、独善で。なんて、愛しい。


「まさか、君の口からそんな殺し文句が聞けるなんて思いませんでした。」
「…いい加減に黙らねぇと、本当に部屋から追い出すぞ。」




残響
ラストワルツ

( そんな事言われたら、ますます手放せなくなるじゃないですか! )
いつか観た景色は、とても鮮やかだった。それは良くも悪くも極彩色で、とても単調な、紅い、赫い、見た目とは裏腹に温もりなんて全く灯していない、いや、既に温もりの無くなってしまった、世界。ただ暗い闇を映す双眸はまるで遅すぎた制裁の時を怨望する様な。これをきっと人は、罪の意識だと言うんだろう、生きている者の、背負っていかなければいけない者の、傲慢。もう届かないと知っているのにそれは懺悔の様に尽きる事無く、それでも言葉としては、音を成す事も無く。
助けてあげられなくてごめんね。もっと生きたかったよね、この世界をきっと、もっと見ていたかったよね。もしも、平和な世界に、平和な時に、生まれていれば。もしも、こんな昏い戦争に巻き込まれなければ。

もしも、僕が、指令を下して、いなけれ ば ?


「コムイ。」
「やぁ、珍しいね、君が僕の所に来るなんて。」


風に揺られる黒髪を一度目で追って、まるで睨む様に此方を見続ける眼へと視線を移す。ああ、ちゃんと色を灯した、蒼黒色の瞳、綺麗な、綺麗な、深い海の底を思わせる様な、それでも確かな鋭さを併せた瞳。その周りを縁取る睫毛が一度だけ、本当に僅かに揺れて。


「どうかしたの?カンダ君。」


ごめんね、ごめんね、本当は知ってるよ、心配して来てくれたんだよね。君は本当は誰よりも敏感で、誰よりも人を見ているから。だからきっと、僕の微笑った顔を見て、君は何も言わずに、きっと、何事も無かったかの様に、いつもと"同じ"を演じてくれる。(ああ、少し御幣があるね、僕が"演じさせている"んだ。)踏み込まない君と、踏み込ませない僕。平行線はきっと交わらない。闇色の世界には、交わる線なんて無い。


「…おい。」
「うん、なんだい?」
「下手な笑い方してんじゃねぇよ。」


一瞬、本当に一瞬だけ機能を停止した脳が動き始めたのは、無感情に響いた靴音が、耳を掠めたから。紛れも無く一歩を踏み出した彼が生み出した靴音は、二人しかいない部屋に嫌に、響いて。


「…困ったな。」
「俺は死なない。ちゃんと此処に…お前の所に帰ってくる。何があっても。」
「保障は…無いだろう?」
「自信はある。だから、テメェは何時も通り巫山戯た顔して、笑ってろ。」


踏み出した一歩は簡単に壁を打ち破り、目前まで歩みを止めることも無く。ねえ、どうして、そんなに簡単に、僕は君に手を伸ばす事すら躊躇うのに。頬へ触れた指先からは確かな、"生きている"君の温度、が。この世界に確かなものなんて、何一つ無いのに。願いながら伏せた瞳を開いて見据えた先にある変わらない意志の強さを秘めた瞳が、昏くこの世界を嘆きませんように。
哀しむ事すら赦されない僕らの祈りを、どうか、どうか、どうか。


「指令を寄越せ、コムイ。」




闇色
オペラグラス

( ねえ、それでも君だけは、確かに此処にいて。 )
君は何時だって、僕の傍にいてくれたから。
僕は大切なモノさえ、見えなくなってしまっていたのかもしれない。本当に大切だったものはこの手を何時だってすり抜けてしまって。無くなってから気付くなんて遅すぎる、君がくれたものも何も、僕はまだ返せていないのに。手の届かない君の存在を、仰いで、仰いで、仰いで。
ねえ、神様。どうしてなんですか、神様。
僕らは生きている。世界の為なんてエゴを振り翳すつもりは無いけれど、それでも僕らは確かに。
この世界と共に生きていた。僕と君と、この世界は、確かに共に在って。何時から軋んだ音を立てていた?それすら僕は気付けないまま、巻き戻らない時間に、ただ後ろを振り返る事も出来ず、前を見据えることも出来ず、ただ、ただただ、立ち止まったまま。

ねえ、どうして、世界から零れ落ちたのは、僕じゃなくて君なんですか?


「アレン。」
「嘘ですよ、だって、カンダが?まさか!」


乾いた笑いが口元を彩り、隻眼を貫く。知っている。識っていますよ、ラビ、貴方が、そんな馬鹿げた冗談なんて言わないこと。でもね、彼が僕の傍にもういないなんて、そんなこと。
認めない、信じ無い、君の瞳にもう、僕が映る事が無いなんて、そんなこと。やめて下さい、そんな辛そうな眼で僕を見ないで下さい。僕は、壊れてなんていない。彼が、いなくなる訳がない。だって、約束したんですよ、照れて視線も合わせてくれない彼の指を絡めて、繋ぎとめて。
"絶対に君を護りますから。だから僕の傍にずっといて下さい"、って、彼は確かな肯定はしてくれなかった、けれど、悪態を吐きながらも確りと繋いだ手を、握り返してくれたから。


「また、長期の任務にでも…行っているんでしょう?」


耳鳴が、警鐘が、鳴り響いてやまない、嫌だ、こんなの、僕自身が彼がい無い事を認めてしまっているみたいで。だってまだ、彼の声だって温もりだって何もかも。
この目は、この耳は、この掌は、この唇は、この体は。何一つ、薄れてすらいないのに?それなのに、何故、此処に君だけがいないの?


「――――っだって、僕、約束したんですよ、カンダと…ッ…!!」
「……アレン。」
「護るって、傍にいるって、…っそれなのに…!!」
「アレン!……辛いのは…皆同じさ…」
「…おな、じ…?」


同じ?…痛みや辛さが、同じ?僕と、彼の、時の廻りが、貴方達と同じだとでも、僕にとっての彼の存在が、貴方達にとっての彼の存在と、同じ、だとでも?
投げられた小石は水面へ波紋を残して、緩く、緩く、穏やかに、諭すように。
目の前が昏く、紅く染まっていく感覚、痺れていく両手と神経、君を抱いたこの腕の感覚すら今は思い出せない。何処か遠くで酷く顔を哀しそうに歪ませた君を観た気がするけれど。大丈夫ですよ、安心して下さい。僕はきっと君を、護ってみせます。だから、ちゃんと傍にいて下さいね。
微笑った瞬間、ブツリと、耳の奥で、鈍く何かが切れる音が、した。


「哀れなこの世界に、救済を。」




衷情
エンドロール

( 白く歪む世界で僕は再び君を見つけ出してみせるから。 )
このひとは、いつでもそうだ。自分は何も言わない癖に、僕が何かを言わずにいると、酷く機嫌が悪くなる。(今日だって、ほら、そうだ。ちょっと書き置きを忘れて買い物に出ただけなのに。)(しかも、あからさまに怒りをぶつけて来ないから、随分とタチが悪い。)折角、朝からのんびりとしていた部屋は今はもう、閑散としていた。こうやって、ほら、自分は直ぐに、愛人さんの所へだったり酒場だったり、フラっと出掛けて行って、いつ帰ってくるか理解らない癖に。せめて何日も宿を外すなら、(むしろ、町に滞在する日数くらい、)教えてくれたって、良いと思う。

流石に、一週間、宿に帰って来なかった時は、師匠の顔を見た瞬間に、泣いてしまったけれど。


「あ、師匠、お帰りなさい。」
「あぁ。」


木製独特の軋む音と共に、コツコツと靴音が室内へ響き、ポス、と通り際にテーブルへと置かれた帽子を掬い上げ、あるべき場所へとかける。いつしか自分の仕事になった其れが、少し心地良かった。(なんだか、僕だけ少し特別、みたいで。)(だって師匠、誰かに私物を触らせる、なんて、そんなに気を許したりしないでしょう?)そんな事で僕の機嫌が良くなるなんて、きっと師匠は知らないだろうし、言う気も無いけれど。(だって師匠は気紛れだから。)


「早かったですね、帰って来るの。」
「あぁ。」


未だ少し、不機嫌そうな声は窓際の椅子から聞こえてきて、僕の方には来ない。(いつもの事だ。)仕方ないから、師匠のお気に入りのお酒、(大体、さっき買い物に出たのだって、師匠のお酒を買いに行ったのに。)を手に窓際へと足を進める。チラリ、と僕を一瞥して、手に持っているお酒へと視線を移した。


「はい、どうぞ。」
「…どうした。」
「さっき、買いに行ったんです。師匠、これ好きでしょう?」
「……、…」
「師匠?」
「手を出せ、馬鹿弟子。」
「え?わっ?」


ポイ、と放り投げられたものを咄嗟に両手で受け止め、マジマジと眺める。紅く、毒々しいほどに色づいた、林檎。知恵と罪を詰め込んだ、林檎。噛めば甘い蜜が滴りそうなそれと師匠を見比べて首を傾げれば、聞こえたのは小さな嘆息。


「お前は、それが好きだろう。毎朝食べるほど。」
「え?…師匠、買って来てくれたんですか?どうして?」
「買い忘れた、ってまた買いに行くんだろう。」
「……てっきり愛人さんの所に行ったとばかり…」
「そんなに早く、コトを済ませて帰って来るか。」
「…そう…、ですけど…」
「それに、あまり外にいると、泣くだろう。お前は。」


再度、師匠と、手の中の林檎を見比べて、言われた言葉を頭の中で繰り返す。なんだ師匠、仲直りのしるし、ですか?僕、悲しかったけど、怒ったりなんてしてませんよ。あ、でも、きっとそれも判ってるのかもしれない、なんたって師匠だから。こんなに簡単に、僕の気分、直しちゃうんだから。もう、今度からはちゃんと、僕も書き置き、忘れませんから、師匠も一言くらい、言っていって下さいね。そしたら僕、ちゃんと泣かずに待ってます。


「師匠、林檎半分こしましょう!」
「…一口でいい。」




幸福
レジスタンス

( まだまだ子供な僕の、最大限の譲歩、ですよ! )
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